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MMTのせいで、消費増税を巡る議論が、大混乱に陥っています

国債が未来への贈り物? 「将来世代へのツケ」ちゃうんかい!

■10%への消費増税は、悪夢のシナリオ

 

 もっと踏み込んだのは、ローレンス・サマーズ(元米財務長官)です。サマーズは、日本の経済政策について問われると、こんな反応をしています。

「安倍政権の財政政策については、柄にもなく外交的な態度を見せ「少し矛盾している」と口を濁した。さらに突っ込んで聞くと、2014年4月に消費税を引き上げるのは間違いだと警告したと述べ、「その後起きたことで私の考えを変えたことは何もない」と言う。」(2016年1月12日 フィナンシャルタイムズ(日本経済新聞))

 サマーズは、2014年の消費増税は間違いだと日本政府に警告したと言っています。日本政府は、サマーズの警告を無視したわけですね。さらに露骨なのは、ポール・クルーグマン(ニューヨーク州立大学 経済学者)です。

「実際、アベノミクスが実行に移されてから、株価も上昇し、景気も回復基調に入ろうとしていました。しかし、私はここへきて、安倍政権の経済政策に懐疑心を持ち始めています。というのも、安倍政権はこの4月に消費税を5%から8%に増税し、さらに来年にはこれを10%に増税することすら示唆しているからです。消費増税は、日本経済にとっていま最もやってはいけない政策です。今年4月の増税が決定するまで、私は日本経済は多くのことがうまくいっていると楽観的に見てきましたが、状況が完全に変わってしまったのです。すでに消費増税という「自己破壊的な政策」を実行に移したことで、日本経済は勢いを失い始めています。このままいけば、最悪の場合、日本がデフレ時代に逆戻りするかもしれない。そんな悪夢のシナリオが現実となる可能性が出てきました。」(2014年9月16日 週刊現代インタビュー)

 クルーグマンは、10%への消費増税は、悪夢のシナリオだとまで言い切っています。

 アデア・ターナー(英金融サービス機構元長官)もまた、消費増税の延期を提言しています。それどころか、財政赤字を拡大し続けろとまで言っています。

「日本政府と日銀に対する提案は3つある。第1に、政府は2019年10月に予定している(8%から10%への)消費税率引き上げを再延期し、高水準の財政赤字を計上し続けるべきだ。民間貯蓄超過を穴埋めするためには、相当規模の公的赤字が2020年代半ばまで必要なことを甘受すべきである。」

「これらの政策の組み合わせは、根強いデフレ圧力と公的債務問題に対して、日本が取り得る最も有効な打開策になると考える。日本は、追加的な政府支出の効果が将来の増税予測によって相殺されるという「リカーディアン均衡」にはまってしまっている。しかも、かなり強いリカーディアン均衡だ。この罠から抜け出すためには、(中央銀行が財政赤字を穴埋めする)「マネタリーファイナンス」を国民に向けて明示的に行う必要がある。」(2018年1月10日 ロイター)

 これを読むと、なぜターナーがMMTを批判しているのか、分からなくなってきます。

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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  • 剛志, 中野
  • 2019.04.22